KAOS (78) 文を形式化する基礎としての論理:命題論理 (4.4.1-2)

今回は推論(導出)規則である.或いは,論証のパターンとも呼ばれる.なお,論証といっても,命題論理の範疇であって,日常生活で我々が常にそうしているというわけではない(多足トゥールミン

推論規則としては,自然演繹に基づく基本的な推論規則をまず示すべきであるが,先ずはここでは原書に合わせる.Resolutionと呼ばれるものを示す(基本的な推論規則と異なっているわけではない).今も人工知能という言葉は,クラウドや自動車の支援システムとともに復活した感があるが,その少し前の時代に人気があったときの基本となるアプローチである.

d_1

modus ponens

分子にあたる部分(上段)が前提であり,分母にあたる部分が結論である.

上段の意味は次になる:P→Qが成り立ち,いまPが真だとする.このとき,Qが成り立つ.

モーダスポネンス(modus ponens)といういわゆる肯定式である.よく知られている推論で,小学生でも知っていると思う.ただ,これだけだと余りありがたみを感じない.「今日飲んでくるなら,ごはんはいらないね」という文は,P:「飲んでくる」→Q:「ごはんはいらない」と考えられるが,日常生活において,通常はPが真であることを含んでいる.Pが真かどうかが全くの不明なときには,発話されない.従って,文の意義としては,「のみにいけなくておなかをすかして帰ってきても,食べるものはないと思え」ということである.条件文を伝えたいわけではない.まして,本当に飲んできたときに(Pが真),ご飯がない(Qが真)ことにあらためて感心したいわけでもない.

語用論的世界の例は,あんまりかもしれないが,会話でなくても同じである.そのことについては,書く機会もあると思う.

ちなみに,分数方式ではない別の(フレーゲ風の?)記述法もある.

P → Q, P ⊢ Q

こちらは,場所をとらない.しかし,基本は分数方式で書くことにする.

同様に,別の推論規則を見る.推移律(transitive law)とも呼ばれる.

d_2

chaining

PならばQで,QならばRから,PならばRである.

いわゆる「風が吹けば」文である.ゼロとイチの世界だから成立する.

d_3

resolution

複雑に見えるが,まず,P ∨ Qが成り立っている.かつ,¬P ∨ Rも成り立っている.いま,Pが偽のときには,Qが真である必要がある.逆に,Pが真のときには,Rが真でなければならない.従って,Q ∨ Rとなり,Pを取り除くことができる.

いま,次が成り立っているとする.

¬trainMoving  ∨  doorsClosed, trainStopped  ∨  trainMoving

これは,resolutionの規則によって次になる(trainMovingの位置が異なっているので注意).

doorsClosed  ∨ trainStopped

これらは,複雑な命題式を簡略化するために用いる.上記に上げた3つの例とも,原子式がひとつ減っているのに気づく.一つしか減らないが,繰り返して適用することができれば,複雑な式も最終的には簡単な答えを得ることができる.機械的に解くための方法である.

(nil)