KAOS (56) 要求の優先度付け (3.4-3)

今回は,手計算で,前回のペア比較表から,各代替案の重みと整合性指標を求める.

簡単なペア比較表
代替案A 代替案B 代替案C
代替案A 1 9 5
代替案B 1/9 1 1/4
代替案C 1/5 4 1
列の合計 1.311 14 6.25

前回と同じであるが,列の合計値を加えている.

この合計値を用いて,各列を正規化する.

正規化した結果
代替案A 代替案B 代替案C
代替案A 0.763 0.643 0.800
代替案B 0.085 0.071 0.040
代替案C 0.152 0.286 0.160
列の合計 1.000 1.000 1.000

次に,行毎の平均をとり,重みベクトルとする.

正規化した結果に対して行の平均を求める
代替案A 代替案B 代替案C 平均
代替案A 0.763 0.643 0.800 0.735
代替案B 0.085 0.071 0.040 0.065
代替案C 0.152 0.286 0.160 0.199
列の合計 1.000 1.000 1.000 0.999

重みベクトルは,1tになる(丸め誤差で,合計が1ではない.tは転置行列であることを示している).最初のペア比較表に,この重みを掛け合わせる.主たる目的はここで達成している.次は,そもそも妥当な入力を最初にしたかの確認用である.

重みを掛けたペア比較表
代替案A 代替案B 代替案C 行の合計 合計/重み
代替案A 0.735 0.585 0.995 2.315 3.150
代替案B 0.082 0.065 0.050 0.197 3.031
代替案C 0.147 0.260 0.199 0.606 3.045

ここで「合計/重み」の平均値を計算すると,3.08が得られる.これで,表計算は終了である.大学に入った最初の線形代数演習を,いつも思い出してしまう.

この3.08が,ペア比較マトリクスの最大固有値(λmax)になる(有効桁数を4桁以上とると,3.07127となる.ただ入力値が実験結果というわけではないので,細かな違いを気にしても仕方がない).

ここから,整合度指数(Consistency Index,CI)を計算する.計算式は,次である.

CI = (λmax – n)/(n – 1)

有効桁数値を増やした値を用いて計算すると,CIは,0.0357となる.通常は,この値が,0.1より小さければ,ペア比較マトリクスは妥当とする.

さて,まとめる.今回の計算で重要なのは,重みベクトルである.重みベクトルは,最終的な代替案の重要性を示している.ここでは,1t であり,優先度は,代替案A>代替案C>代替案Bとなる.

もう一つは,最後に計算したCI値である.前回見たようにペア比較するときに,全体の表をイメージしてしまうと,ペアでの比較ではなくなる.そこで整合性をあえてとるような入力をすると,CIはゼロになってしまう(実際には,入力可能な値に限りがあります).或いは,一貫性を持たない入力をすると,大きな値になる.

閾値0.1は,経験値である.しかし,不真面目な入力をチェックするのに役立つ.特に,アンケートでは.

(この項つづく)

(nil)

  1. 735, 0.065, 0.199
  2. 735, 0.065, 0.199