英国的なもの,ドイツ的なもの

今日は,東京も久しぶりの雪です(この文章も久しぶりです).雪国に育った私にとっては,とてもほっとする一日になりました.

今回は,セーフティケースと ISO26262 の関係についてちょっと異なった側面から書いてみます.セーフティケースは英国において長年使用されてきました.また,英国の多くの規格(軍事・原子力発電所・航空)はセーフティケースを重視しています.ここでは,セーフティケース自身が,安全性を担保するための一つの文書体系となります.また,主として用いられている分野は,前述のように軍事・原発・航空です.調達(規制)する側と製造する側が明確に分かれている分野となります(どういう仕様とするかはユーザが規定するといっても良いかもしれません.自動車のような製品とは異なります).セーフティケースは,内部で安全を確保するためにも用いられますが,第一義的には,外部(調達者・或いは規制当局)に対して安全であることを示すものという位置づけになります.

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このことは,別の違いとも関係してきます.ISO26262では,従来のライフサイクルにあるように,安全に関する概念ー要求ー設計といったつながりを重視します.段階的に詳細化を行うことで,安全性を担保するという考え方は,ソフトウェア開発の伝統的な考え方と同様です(ウォータフォールモデル的と呼んでもよいかもしれません.価値判断は別としてソフトウェアの貢献だろうと思います).ここでのセーフティケースの位置づけは,作業成果物を紐付け説明するという,どちらかといえば補助的なものとなります.安全の担保は,既に段階的な詳細化において,実施されていると考えて良いと思います.
一方で,伝統的なセーフティケースのアプローチは,ゴール指向の立場をとり,最初の主張(ゴール)に対して,如何に立証するかという点を先行して考え,分割していきます.ここでは,どう外部に説明するかということが重要です.同じようにトップダウンではあるのですが,安全性がどう担保されているかの証明(立証)を第一義とする機制になっています.この点で,ISO 26262 が,SLCPでいうタスクレベルのプロセスも成果物も定めている方式に対して,(パターンはあったとしても自由度は高く)思想的には異なっているといえると思います.

乱暴なくくりですが,前者はいかにも成文法のドイツ的ですし,セーフティケースを重視する後者は,伝統的に不文法主義のイギリス的なのかもしれません.

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さて,ここからは宣伝です.今日弊社では,セーフティケースのための GSN エディタをリリースしました.また,今週の金曜日に SEA-SPIN のミーティングでセーフティケースをテーマにみなさんと議論する予定になっています.よろしければ,ご参加ください.

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