KAOS (86) 文を形式化する基礎としての論理:述語論理 (4.4.1-10)

記号論理自体は,それ自体で閉じた世界である.

それを利用するとなれば,我々が住んでいる現実世界と紐づける必要がある.紐付けることで,始めて要求を管理するという目的に役立つことになる.

さて,述語論理に戻る.今回は,もう一つの述語論理の特徴である限量子(量化子)についてである.

限量子
種類 記号 文での使用例
全称限量子 xP(x) 全てのxで,P(x)である
存在限量子 xP(x) あるxで,P(x)である

限量子とともに用いるxのことを束縛変項と呼ぶ.「”あるxにおいて”Pxが成り立つ」といっているのであるから,xは,「ある(∃)」によって束縛されている.束縛されていない変項のことを,自由変項と呼ぶ.


さて,例題に用いている列車の運行管理システムの例は,次のように記述できる.

∀tr1, tr2(Following(tr2, tr1) → Dist(tr2, tr1) > WCS-DIST(tr2))

tr1,tr2は,束縛変数である.∀xP(x)→Q(x)というときに,限量子は,P(x)のxのみを束縛する.∀x(P(x)→Q(x))ならば,Q(x)のxも束縛されている.

参考までに,文の解釈を示しておく.

全ての列車に関して次が成立する.いま,tr1, tr2 と名前をつけ,tr2は,tr1の後ろを走っているとする.このときに,tr2とtr1の距離は,tr2の最悪時近接距離より大きくなければならない.

「全て」であるから命題論理でも同じように書くことができる.しかし,述語を使うことによって,文の構造が分かりやすくなる.また,複数の変項を持つことにより,表現できることが増える.

(nil)