KAOS (5) ケーススタディ (1.1.2-1)

ミーティングしたいという要求は,時間的・空間的な重なりから,競合するかもしれない (p.10)

説明のために,3つのケーススタディが示されている.以下は概要のみだが,それぞれ2ページほどの長さがある.

ケーススタディ1:図書管理

不思議の国大学(UWON)では,図書の管理システムを刷新したいと考えている.現状は,一つのシステムではない.各学部等で,独自に構築したもののしかない.これでは効率がわるい.従って,より効率がよく,書籍の購入費用も少なくて済み,ユーザにとっても便利な単一のシステムに移行したい.

ケーススタディ2:列車制御

不思議の国空港(WAX)では,空港へのアクセスが問題になっている.これまでは,バスが主であった.しかし,運行管理を工夫することによって,鉄道をより効果的に使うことにした.高速大量輸送が可能であり,より正確な時間で運行できる可能性があるから.ソフトウェアによって,この高速の輸送に加えて,安全性と快適性を実現したい.

ケーススタディ3:会議管理

不思議の国ソフトウェアサービス会社(WSS)では,グローバル化が進展する現状を見て,会議管理システムに需要があると考えた.様々な場所や国でミーティングが行われる可能性があるからだ.そこで,この会議管理システムでは,どのような機能が必要かを考えた.しかし,単に参加者の出席可能日をまとめるだけではだめで,例えば職位が上の人の意向を反映するなどさまざまなパターンに対応する必要があることが分かってきた.

ケーススタディというのは,無機質な例が多いが,ここでは読み物としてもおもしろくなっている.例えば,ケーススタディ3の上位の職位の意向を尊重するという内容も,最終的に要求としてどう書くのかを考えると興味深い.

さて,文頭の言葉は,ケーススタディ3から抜き出している.何れもソフトウェアの話であるが,このあと物理的な制約を考慮しなさいということにもつながってくる.もちろん,ケーススタディ1でも,「本」は分けられないし,ケーススタディ2では,同一時刻に同一路線にいる異なった列車は,ぶつかっているに違いない.全て物理制約を含んでいる.

この物理制約以外にも,便利とはどういうことか(ケーススタディ1),快適とはいかなることか(ケーススタディ2)を考えると,楽しい.

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